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2020年4月28日

IFRS導入は経営管理を見直す絶好の機会

日本では強制適用が求められていないIFRS。IFRSへの変更は人手がかかり、導入している自社の会計システムの変更も行わなければいけない可能性が高いです。しかし、IFRS導入により決算であがってくる数字が経営に役に立つ数字に変わるとしたら、導入しようかと思うのではないでしょうか?以下ではどういった点で経営に役に立つ数字に変わるのかを説明していきます。

1. IFRS導入によりグループ会社の会計基準を統一

全世界に子会社があるグローバル企業を考えてみます。IFRS導入前は各子会社がある現地国の会計基準に従って会計処理が行われます。そのため、同じ会計事象でも異なる会計処理が行われることになります。例えば、商品を得意先向けに出荷した時点で売上を認識する会社、商品が得意先に到着した時点で売上を認識する会社、商品が得意先に到着し、得意先が検収した時点で売上を認識する会社が併存する可能性もあります。このような状態ですと、各子会社の売上を単純に比較するだけでは、どの子会社が最も売上が大きいのかがよくわかりません。

各社の会計基準をIFRSに統一すると、各社の業績を測る物差しが統一化されることになるので、グループ各社の比較が容易になり、互いに他社と比較することにより、自社の経営課題が見つかりやすくなります。

2. IFRS導入により他社との比較可能性が高まる

一昔前は海外の会社が日本に進出することも日本の会社が海外に進出することも少なかったので、自社のライバル会社は日本の会社でした。当然自社もライバル会社も同じ日本基準に従った財務諸表を作成しているので、比較が容易でした。

しかし、現在は海外の会社が日本にどんどん進出し、逆に日本の会社が海外に進出することも当たり前になってきました。こうなってくると、自社のライバル会社が日本の会社でなく、海外の会社であることも十分あり得ます。海外のライバル会社は現地国の基準かIFRSを採用しているはずです。自社が日本基準を採用しているとすると、自社と海外のライバル会社は違う会計基準を採用していることになり、比較が難しくなります。 日本基準とIFRSで大きく違う点をいくつか挙げてみます。

親会社と決算期の違う子会社の連結財務諸表への取り込み方

日本基準では子会社の決算日と連結決算日の差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算をそのまま連結することができます。ただし、連結修正仕訳で相殺消去されるはずのグループ間取引で3か月のずれにより、重要な不一致が存在する場合は追加の調整仕訳を入れます。

一方、IFRSでは同じ日時点の財務諸表を連結する必要があります。連結決算日と子会社の決算日は異なってもよいのですが、連結決算日時点で子会社は仮決算を行う必要があります。

IFRSと日本基準では連結決算日と異なる決算日の子会社の連結について、そもそも連結する財務諸表が違うことになります。これは大きな差異になる可能性があります。

のれんを償却するか否か

のれんとは、取得原価が受け入れた資産及び負債に配分された純額を上回る場合の超過額のことを言います(企業結合に関する会計基準より)。経営者はどうしても欲しい会社があった場合、「買収時点での価値+現時点で見積もった将来の伸びしろ」に対して対価を支払います。この将来の伸びしろをのれんと解釈頂いて差支えありません。日本基準ではのれんを資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、規則的に費用化します。

また、のれんは「固定資産の減損に係る会計基準」の対象資産で、将来の伸びしろ部分の資産価値が貸借対照表に計上している金額よりも大きく減少した場合は、減少した部分を費用化します。

一方、IFRSでは上記の日本基準でいう規則的な償却はなく、減損による費用化ということしかありません。同じ会社を買収しても日本基準を採用しているかIFRSを採用しているかで毎年計上される利益が変わってきます。日本経済新聞の記事(2018年6月7日:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO31431690W8A600C1DTA000/)にありますように、日本基準を採用している会社が多い日本では利益面で海外の会社に劣ってみえてしまいます。

3. IFRS導入は組織を変更する力にもなる

全世界の子会社が全てIFRSを導入すると、様々な現地国独自の会計基準に対応した処理が必要なくなります。そして、その処理をするために確保していた人材も不要になります。

一方で、IFRSは原則主義と言われ、基準の中に日本基準のような細かい規則が定められておらず、グループ会社全体で規則を定め、その規則に従って会計処理を行う仕組み作りに人材が必要になります。ここでいう細かい規則というのは例えば日本基準では繰延税金資産の回収可能性に関して会社を5個の分類に分けて、分類ごとに会計処理を定めているといったものです。

日本基準でもIFRSでも繰延税金資産の回収可能性の判断に、収益力に基づく課税所得の十分性、タックスプランニングの存在、将来加算差異の十分性を検討するというのは一緒なのですが、5個の分類に分けるといった細かい規則はIFRSにはありません。話を元に戻します。会社が採用する会計基準を変更することが会社内で行われていた仕事を変え、組織も変えることになるのです。

個々の会社にフォーカスしていた人材が全世界の子会社を意識して仕事をすることになるので、IFRS導入前には見えていなかった経営上の問題が見えてくる可能性が十分にあります。